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拓斗は手刀で、縦に空を斬る。
(ッ!来る……!)
ドガァァアア!!!
拓斗の動きに合わせ、拳を開いた巨大な右腕が、手刀の形で孝に向かって倒れこむ。
それを孝は右に跳び、躱す。
「ケホ、ッチ!視界が……。」
衝撃で巻き上がった土煙が、孝の視認を阻害。
「さっさと構えろォ!次行くぞォゴラァ!!」
怒鳴り声と共にその障害を寄せ晴らしたのは、正面から迫り来る左手の巨拳。
「のわっと!」
既(スンデ)のところで判断が追いつき、屈んで巨拳の拳圧を浴びる。
「……っんヤロォ!」
生成、刀。
脱走した夜と同じく、左肩から柄を出し、背部を裂いて展開。
抜刀と共に、上部へ向けて弧を描くように切っ先を振るう。
「斬っ!!」
ザバァ!
拳の動脈にあたる部位を斬り、血の代わりに土砂が飛び散る。
わざわざ一番細い部位である手首に振るった甲斐があって、拳は見事に切断され地面に落ち、元の土くれへと戻った。
「でも……、終わりじゃねぇよな、これ……。」
孝の予想は正かった。
残された腕部の切断面から、土塊が物凄い勢いで盛り上がり、巨手が生え変わる。
まるで何事も無かったかのように、生え変わった手は雄々しくその豪腕を誇示していた。
「ふむ…………取敢えず一つ。」
「よそ見してんじゃねぇよクズ!!」
再生するその過程を黙って観察していた孝へ、もう一方の腕が横合いから拳を突き立てる。
躱す。今度は真上に跳ね、巨拳の上へと飛び乗る。
「高位!獲った!」
「だから何だ?土は踏む物だろアホかテメェ。」
そんなことも知らないのかと、相手を小馬鹿にするように拓斗は諭す。
途端、あれ程まで豪腕、剛拳であったはずの土塊が軟化し、孝の足を捕捉する。
「な!?(これは!最初の蹴りと同じ……)」
「地獄剣山・罪削ぎ(ツミソギ)。」
足を封じられ身動きがとれなくなったところへ、拳の形が変質し、それは針の山と化した。
孝の躰に、冥府の王の刑罰が襲い来る。
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