第5章 世界はあまりに■■過ぎる

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「ガァ……!?」 器用なことに、その針は一本たりとも孝に直撃せず、孝の皮と肉を削ぐように全身に掠めさせる。 「だ………らぁぁあ!!」 孝は苦悶に耐えつつ手持ちの刀を縦横無尽に振り回し、血の滲んだ針山を足場諸共乱切りに切り刻む。 刻まれた土砂は空中でサラサラ、ボテボテと重力に引き寄せられ、元の居場所へと還る。 足場を切り刻んだ孝もその理は同じ。 地面へ着地し転がり、受身を取る。 背後を振り返れば、既に再生しつつある泥土の腕。 「兎にも角にも!二つ目!」 さっきから何かを数えつつ、孝は次の行動へと移るために、傷だらけの四肢を無理矢理動かす。 だがしかし、このままでは埒があかない。 ならばと、標的を“元凶”へと変更された。 拓斗を中心として周るように走り、後方からの巨腕の追撃をすり抜けながら新たな武器の生成を開始する。 展開箇所は脇腹に設定。 拓斗を半周したあたりで生成が完了し、直ぐ様にそれを拓斗に放つ。 走りながら展開したのは、二発の小型ミサイル弾。 同時に撃ち出されたそれらは並列に並び、拓斗の肢体を吹き飛ばさんと踊り迫る。 「…………。」 それらを脅威とも感じぬ様子で拓斗は無言でその場に佇み、これも孝の奇襲同様、部分的に卵の殻のような土の膜壁を纏い、ミサイル二発の直撃を“それぞれ”防御。 ドガァァアァアア!!! そこから広がる爆発や爆風すら、壁を広げて余すことなく防ぎきる。 「────三つ目。」 半ば結果を見据えていたかのように、孝は変わらずにまた何かをカウントする。 「ハッ……なに企ててんだかは一先ず置いといて、中々楽しげな能力使うじゃねぇかよ転校生ィ?」 拓斗も変わらず────闘争が始まった時のままの、“傷一つない変わらぬ姿で、変わらぬ位置に立ったまま”、激情を抑えた落ち着いた声で孝にふと語りかける。 「何だそりゃ、何なんだ?武器人間かよ。ター○ネーターかテメェは。 『青生生魂(ヒヒイロカネ)』とか言ってたな? パッと見、強化系の生産型か。初めて見たぞ。少なからず生徒会(ウチ)にはいねぇな。」
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