第5章 世界はあまりに■■過ぎる

14/67
前へ
/391ページ
次へ
用を成してボロボロと崩れゆく膜壁の隙間から視線を覗かせ、拓斗は孝の異能に興を向ける。 「……金属生成。人体のエネルギーを対価に別種の金属元素を生産、またその構築。 ただそれだけしか出来ない、しがない能力ですよ。」 「金属生成だァァ?オイオイ嘘ついてんじゃねぇよ、爆発してんじゃねぇか。火薬は金属だったか?」 「そんな物は“最初から持っているので”。」 孝は拓斗の気まぐれからの問いに対し、次々と自分の手の内を暴露していく。 黙秘も選択肢にあったにも関わらず、惜しみの無い種明かし。 「あぁん?…………ッ!…ッブ!クハッ、おぅおぅなるほど意味がわかったぞぉ?そうかテメェ“混ぜてんのか”。」 孝の異能とは先も本人が述べた通り、金属生成。 対価を払い金属を生み、それを体内で思い通りに構築する能力。 その為、物理的不可能な純度での生成も可能であり、それがこの能力の強みとも言える。 ならば、その逆。 純度の高い素材を生み出せるなら、“素材の不純化”も出来て当然。 人体とは、元素の塊である。 水素も、炭素も、硫黄も……なんでも有る。 孝はそれらを、金属の構築の際にどさくさに織り交ぜさせることで、火薬の生成を行っていたと言う。 「カハッ、なんだなんだ小賢しいな!ついつい吹いちまったぞコラ。どうしてそうも小狡い!? 鬼心なんたらいう武術ってのは、病にかかる前に会得したモンなんだろ? NEVLOなんつぅ摩訶不思議な力を手に入れても、とことんテメェは“素材のまま”の力で殺り合う気はねぇんだな? それは何だ、テメェの美学か?ポリシーか?はたまた唯のビビりか? 嬲り殺す予定は変わらねぇが、少しだけテメェに興味が持てそうだ。」 巨大な腕を一時待機させ、拓斗は少しだけ愉快そうに顔を歪める。
/391ページ

最初のコメントを投稿しよう!

209人が本棚に入れています
本棚に追加