第5章 世界はあまりに■■過ぎる

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孝にとってそれは喜ばしい事だ。 自分に少しでも関心が向かれれば、相手は自分の話に乗りやすくなるから。 「そういう副会長も存外にいい趣味した技使うじゃないですか。俺にも教えてくださいよ、副会長の異能を。」 「ハァ?見ての通りで、さっきテメェが言った通りだよ。それ以上にはねぇよ。」 「─────アンタ自身の口から、聞きたいんですよ俺は。」 先程、何を企んでいるのかと言われていたが、実のところ孝は、“まだ”何も企ててなどいなかった。 孝が戦闘の中で数えていたもの、それは拓斗の異能の“情報”である。 何を企むにも、“それ”が無ければ話にならない。 不意の戦闘、思わぬ事態。まず率先すべきは情報収集。 例えその身が針山でズタズタに引き裂かれようと、自分の手の内をさらけ出してしまうとしても、これだけは怠ってはならない。 それが本来の鬼心流のスタイル。 にも関わらず、孝の最初の一手。 あの状況、相手の情報など皆無に等しかった。 それが孝の失態の正体である。 そして現在、孝は拓斗の異能の情報を三つ確保する事に成功した。 一つ、グラウンドに生える二本の腕は、結局の所は唯の土。 ダメージという概念は存在せず、修復も容易い。バラバラに切り刻んだ時の修復時間は僅か3秒弱。 二つ、土の軟化、硬化が自在。多様な造形にも対応でき、効果範囲は定かでなくとも、その気になれば、足場を捉えて針などの鋭い造形で心臓を突いて終わらす事も可能だろう。 三つ、術者本人への防御効果が絶大。素手では四肢を捉えられ、小型ミサイル2本でも破壊は不可能。同時2箇所以上の広範囲攻撃にも対応。 ────以上、三つである。 この三つを、孝は一つの結論にまとめた。 はっきり言ってこれは…… (打つ手ねぇよバカヤロウ!? うっわ全っ力で帰りてぇ~!)
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