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「ナイフを体から出せるのか?
あ゛ぁ~…、そんな限定的なモノにも見えねぇな~。
あー…、金属物質の体内生成能力か?
どちらにせよ痛そうだ。
刃の生成箇所から血が出ているぞ? まぁNEVLO患者なら血はすぐ止まるか~…ふぁ、あ~…」
喋り疲れたのか、仕舞いには欠伸までしはじめた。
「………車に乗せてくれ。
行きたいところがあるんだ」
孝は、この女への警戒心を高めた
何故こうまでして余裕なのだろうか?
何か秘策でも……
孝の考えを読んでか、女はまた重たい口を開いた。
「ハァ~…、そう期待されても困るんだがな。…言っとくが私は余裕な訳ではねぇぞ?
ただ足掻いても無駄なのを知ってるだけだ…。
今日の私は、どうしたってついてねぇからな…」
「……いいから車に乗せろ。
殺すぞ…!」
「ま、それも悪くはねぇかもな」
…なんだこれは?
俺はこの女がわからない。
足掻いても無駄?
当然だ。
この状況でなら、俺はどんな動きにも対応できる自信がある。
その事を解らせるために、一般人でも本能で感じとれる程度に殺気を当てて、警告もしている。
そのうえで抗おうとするなら、愚か者と切り捨てられても文句は言えないだろう。
だが、コイツのはそれとも違う。
何故抗わない?
何故怯えない?
何故逃げない?
俺の思考が疑問符で埋まる。
「いいから乗せろって言ってるだろ…!!」
女と自分との間にある温度差に無性に腹が立ち、声が無意識に荒くなっていた。
「あれ?ねぇ、孝さん。
もしかして乗せてもらえないんでしょうか? 私達」
「お前は少し黙ってろ!!」
しまった。
言った瞬間、我に帰る。
この場においては、シロはなにも怒鳴られるようなことはしていない。
これは完全な俺の八つ当たりだ。
自分の矮小さに嫌気が差す。
だが、そのおかげである程度の冷静さを取り戻せた
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