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「いや、すまん。
今頼んでいるとこだから、少し待ってろ」
「アハァハ!それって、一緒に乗ることは許可してくれるってことですよね♪」
…こいつは相変わらずめげないな……。
しかし、俺はシロの能天気さを、少しは見習うべきなのかも知れない。
イラつくっことは、不安ってことだ。
“人と話すときは、安易に不安がるな"
“不安な時ほど胸を張れ"
神父(せんせい)の言葉を思いだし、交渉を再開した。
「あ゛ぁ~…こんなことまでして、一体どこに連れてけって?」
「“神嶋市"だ」
「……はぁん…?」
気だるげな様子はそのままだが、彼女から発せられる空気が、どことなく変わった。
「なぜ神嶋に?」
「あそこは日本で唯一、NEVLO発症者の受け入れ体制をとっている場所だ。 だから、俺はそこで…」
「……お前はそこで………?」
「……普通の人間と変わらない、普通の生活がしたい」
「なんだ、普通の生活でいいのか?」
今度はなんだ?
目的地を伝えた途端、急に質問の質が変わった気がする。
この女は本当に読めない。
「お前の能力なら、もっと別の生き方もあるだろう?
犯罪
を犯しても、そうそう捕まらんだろうよ。
ルールに縛られない自由な生活も可能だろう?
そのうえで、何で平凡で退屈な普通を求める? 勿体ねぇ」
……成る程。確かにそういう選択も、出来ないこともない。
この女の言うとおり、使い方次第でいくらでも望んだものが手に入るだろう。
……だが…………、
だけど俺は……
「そういうのって、何か詰まんねぇだろ」
「…………。」
「なんていうかさ。
ラスボス戦、主人公無敵チート使って圧勝。みたいな?
某ゾンビゲームで無限ロケランぶっぱなしてる時の虚しさ?
なんかそんな感じ。解るだろ?
そもそもさ…」
「…………。」
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