第2章 今日は10位なんだ…

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「いや、すまん。 今頼んでいるとこだから、少し待ってろ」 「アハァハ!それって、一緒に乗ることは許可してくれるってことですよね♪」 …こいつは相変わらずめげないな……。 しかし、俺はシロの能天気さを、少しは見習うべきなのかも知れない。 イラつくっことは、不安ってことだ。 “人と話すときは、安易に不安がるな" “不安な時ほど胸を張れ" 神父(せんせい)の言葉を思いだし、交渉を再開した。 「あ゛ぁ~…こんなことまでして、一体どこに連れてけって?」 「“神嶋市"だ」 「……はぁん…?」 気だるげな様子はそのままだが、彼女から発せられる空気が、どことなく変わった。 「なぜ神嶋に?」 「あそこは日本で唯一、NEVLO発症者の受け入れ体制をとっている場所だ。 だから、俺はそこで…」 「……お前はそこで………?」 「……普通の人間と変わらない、普通の生活がしたい」 「なんだ、普通の生活でいいのか?」 今度はなんだ? 目的地を伝えた途端、急に質問の質が変わった気がする。 この女は本当に読めない。 「お前の能力なら、もっと別の生き方もあるだろう? 犯罪 を犯しても、そうそう捕まらんだろうよ。 ルールに縛られない自由な生活も可能だろう? そのうえで、何で平凡で退屈な普通を求める? 勿体ねぇ」 ……成る程。確かにそういう選択も、出来ないこともない。 この女の言うとおり、使い方次第でいくらでも望んだものが手に入るだろう。 ……だが…………、 だけど俺は…… 「そういうのって、何か詰まんねぇだろ」 「…………。」 「なんていうかさ。 ラスボス戦、主人公無敵チート使って圧勝。みたいな? 某ゾンビゲームで無限ロケランぶっぱなしてる時の虚しさ? なんかそんな感じ。解るだろ? そもそもさ…」 「…………。」
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