第0章 患者NO.3350

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「目眩がする…」 陽皐病院、院長室。 プレジデントチェアーに腰掛けた白衣の女性が、額をおさえながら報告書を眺める。 「申し訳ありません、院長。 まさかこのような事になるとは思ってもおらず…。」 「反省や言い訳の報告までは聞いていない。今は現状と今後の対策についてだ。」 「はい。では現状の確認から。まずは……」 しかし、この陽皐病院で一位二位を争う変人──── 院長、天海 芹香(アマガイ セリカ)と副院長、リアス・ヘルラティア。 この二人がここまで切迫してるのも、なかなか珍しい光景である。 なぜ変人なのかというなら、まずは院長、天海 芹香から。 この院長、先からの高圧的な態度と裏腹に、容姿があまりに幼い。 まだ10代前後くらいだと言われたなら、素直に信じてしまいそうだ。 しかし、その見た目からは想像もつかない程の天才的頭脳を所持しており、医者でないに関わらず、数々の難病・奇病を解明してきた実績を持っている。 NEVLOをいち早く病気と断定し、NEVLO専門研究病院を設立した張本人でもある。 次に副院長、リアス・ヘルラティアについて。 こちらは容姿は全く問題ない。 それどころか、北欧特有の整った顔立ちより、誰もが認めるであろう程の美女だ。 常に冷静な対応をし、どんな仕事も卒なくこなす完璧主義者。 だがしかし、これだけのステータスを兼ね備えていても、腰に下げている日本刀のせいで全て台無しである。 白衣で鞘全体は隠れてはいるが、あまりに目立つ。 これで元科学者だと言うのだから、もう訳が解らない。 新人の研究医が、初めてこの二人と対面したときは、 まず、リアスの容姿に心を奪われ、腰の下がり物を見た途端、表情を歪ませる。 その後、芹香に対して、子をあやすような態度を取り、軍人ばりのシゴキをくらう羽目に合う。 最早、通過儀礼だ。
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