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飛織の家は、親がいない。
何年か前に二人とも出て行ってしまった。
お互いの不倫らしい。
その際に飛織と家と金だけが置いてかれたらしい。
…なんとも言い難い親たちだ。
それでも、それでも飛織があの家に住み続けるのは
あの家が好きだからか、それとも――
「なんだよ、琥珀変な顔してさー」
「はぁ!?誰が変な顔だって!?」
「いや、何でも……」
「ってゆーか、飛織……」
「飛織くぅ~ん、おはようっ。」
俺のセリフに被せるように、
ぶりっ子なあいさつをしたのは
飛織の(自称)彼女。
なんでも、良いところのお嬢様らしい。
名前は―――あれ?なんだっけ?
「あっ、琥珀くんもおはよー」
明らかな棒読み。
多分…イチャこらしたいから何処かに行けと、そういうことだ。
なおかつ、近づくな。
とでも思っているのだろう、大方。
女って、怖っ…
女に限らずだけれども。
「愛理香、離れてよー」
あ、そうそう秋山 愛理香(あきやま えりか)。
秋山グループの後継者らしい。
「秋山さん、おはようございます。
じゃあ飛織くんまた後で。」
そう伝えると足早に学校へ向かった。
どーも、あのぶりっ子は苦手だ。
飛織とか、認めた奴じゃないと敬語にしろだとか。
飛織も好いてはいないらしいし。
とりあえず、考えつつも学校へ向かう足は止めなかった。
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