第1節:出会い First Contact

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果物売りの男が追うのは金髪の見た目、17歳の少年。 下はベルトを2つ交差させるようにつけた七分丈の小豆色をしたズボン、上は黒いタンクトップに首もとの部分がブカブカの白いパーカーの様な物を羽織っている。 彼の名はグレン=ツヴェルグ。 平和な小国、アルリスタ国では数少ない…というか彼1人だけが盗賊まがいのトラブルを起こしていた。 グレンという少年の評判を聞けばアルリスタ国の民から、良い評価は聞けないと言い切れる位だ。 「ダッハハハ!そんな走りで俺を捕まえようったって、そうはいかないぜ!」 そう意気揚々と叫びながら、のどかな朝市を駆けるグレンの手にはいくつもの色とりどりな果実が。 周りの傍観者は彼が商品を盗んだがために追われているのだと直ぐに理解する。 「は、はぁ…こ、こらぁ~…まち…まちやがれ~…」 「誰が待つかよ!またな、おっちゃん!」 走り疲れた果物売りの男は広い額から玉のような汗をかきながら、その場でヨロヨロと動きを止めてしまう。 グレンは、そんな男を無視して、駆ける足を止めることはない。 「よっ、ほっ!」 グレンは近くに立て掛けられていた板を使って、高く跳躍し屋根から屋根へと、その俊敏な動きで乗り移っていく。 これにより、グレンは完璧に逃げ切ることに成功する。
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