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「あぁ、ありがとうジャン君。」
少し離れた場所に転がっていた果物を取りに行っていたジャンが戻ってくると、
ミーナは「少し待ってて」と言って奥へ引っ込んで行ってしまった。
なんだ、どうした、と頭の上にハテナマークを浮かべていると、
ミーナは小さな袋を手に戻ってきた。
「はい、これ形悪くて売り物に出来ない物だけど、食べられるから持っていきな。朝とれたばかりだよ!」
袋の中には確かに形は悪いが赤く美味しそうなリンゴが2つ入っていた。
2人の顔に笑みが広がる。
「タダ!?いいの!!」
「タダよ。どうせまだなにも食べて無いんでしょ?」
「ありがとう、ミーナさん!」
ミーナから袋を受け取ると、2人揃って勢いよく頭を下げ、再び走り出した。
「あんま遅くならないように帰るんだよー!!」
走り出した2人の背中に向かって叫ぶと、振り返って「はーい!」と手を振り、また前を向いて走り出した。
「毎日元気だなぁ、あいつらは。」
ミーナの店の隣に開く店から顔を出した男性が、独り言のように呟いた。
「それでこそあの2人じゃないか。
街もあの子達が来てからと言うもの、活気を取り戻したみたいだし…
まるで、あの2人がこの街に元気を振りまいてるみたいにね。」
ミーナの言葉に男性は「そうだなぁ」と返した。
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