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築地塀で囲まれた、広大な敷地。
南には白砂の敷かれた庭に大きな池。
桜の季節を終えた庭は、牡丹や藤、八重山吹などの花々が美しく咲き乱れている。
実に雅やかな屋敷。
貴族と言うものは、どうしてこうも無駄に財をつぎ込むのか。
必死に花を眺め、歌を詠んでなんになる?
これが、お前たちの望んだ泰平か。
都に住む民たちだけが、人か。
どの村からも追われた私たちを、鬼と呼ぶならそれで良い。
望み通り、鬼になってやろう。
涙など要らない。
弱さなど要らない。
女らしさなど、生きていくには全く無意味だ。
私はこの手に太刀を握る。
殺す為じゃない。
大切なものを守る為に。
その為ならば、私はなんだってしてやろう。
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