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コン。
ベランダに、何かが当たった音がした。
「はるきーー。迎えに来ったよーーーん!」
それが俺らの合図。
学ランを着て、カーテンを開けた。まだ眠くて頭がぼーっとしている俺は、嫌なくらい眩しい日の光に目を細めた。
ベランダに出て、下を見ると、朝からテンションが高いやつ1名、それに乗っかるやつ1名、それを苦笑しながら見ているやつ1名、合計3名が俺の家の前に立っていた。
「遅ぇーよ春樹。寝坊でもしたかぁ?」
「うわーーー春樹の頭、鳥の巣なんだけど!!」
「大丈夫ー!?頭の上の卵落さないようにねーーー!」
「うるっさい!鳥なんてどこにもいねえよ!!あーもう、今いくから!!」
ドタドタと慌ただしく階段を下りて、行ってきまーす、と母さんに一言声をかけ、ドアを開けた。
「おはよーさん」
そう言って、みんなの元に駆け寄ると、3人が一斉にこちらを見て笑う。
「お前、髪直してねーのかよ!」
「そんなに鳥認定してほしいの!?」
「朝からお腹痛いーーーーーーー!!!」
ひどい言われようだ。っていうか、声が大きいから、近所の人にも聞かれているはずだ。ああ、もう。この前は風呂でいい感じに歌っていたのを、たまたま通りかかったこいつらが聞いてて大笑いされ、近所のおばさんにも、「歌が上手なんでしょー」と、微笑まれた。中3男子にとってそれはあまりにも恥ずかしく、顔から本当に火が出るかと思った。
「お前らはどんだけ言えば気が済むんだよ!これくらい学校行くまでには収まるだろ」
少し不満げに言い返すと、女子2人が自分のくしで俺の頭をとかしてくれた。女子が男子の髪を自分のくしを使ってとかすなんて、普通の人が見たら、驚くような光景だけれど、俺たちにとっては当たり前で、いつもの日常だった。
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