春樹

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なんだかモヤモヤしたまま、昼ゴハンの時間になった。じゃんけんで負けた女子2人が自販機にジュースを買いに行ったのを見て、弁当を広げながら俺は冬真に尋ねた。やっぱり、いくら親友とはいえ、女子の前でこんな話題は気が引ける。 「なあ冬真ぁ」 「なに?」 ラップに包まれたサンドイッチを開きながら冬真がちらりと俺の方を向いた。 「進路調査票さー、書くこと決まってる?」 「あーうん、決まってるよ。」 軽く、“だよなー、こんな早くになんて無理だよなー”なんていう返事をするつもりだったのに。あっさりと予想外の返事が来たから、思わず冬真を凝視した。 「んだよ、その目は」 「え、おまえ、なんか決まってんの?」 「うーん、まあ一応は?」 そのまま何もなかったようにサンドイッチにかぶりつく。今日は冬真の母ちゃん特製のタマゴサンドイッチだ。 「え、なになになに!?教えろよそーゆうのは!!」 冬真が、うっとおしいような目で俺を見る。 「うわー今日の春樹、いつにもましてうるせえなあ。笑」 「いやいやいやごまかすな!教えろって!」 身を乗り出して迫ると、“ほんとにしつこいな”と苦笑しながらサンドイッチを一旦置いた。 「・・・まだ漠然としか決まってないけど、俺、カメラマンになりたいんだ」 静かな、声だった。 「カメラマン?」 「そ。テレビとかじゃなくて、写真の方な。ほら、俺写真撮るの好きじゃん。それを仕事にできたらな、って考えてて」 決まってるのはそれだけしかないけどな、と言って、冬真は照れたように笑った。 「ちょっとーなに難しい顔してんのー?」 缶ジュースの角が俺の頭にコツンと当たる。どうやらうるさい女どもがお帰りになったようだ。 「痛って!」 「なにー?真面目な話ーーー?」 ワクワクした顔で、千秋が尋ねる。俺が痛がっているのを無視して話し始めた千秋を見て、冬真が、まあな、と苦笑した。 こうなったら、夏帆も千秋も収まることはないので、俺は一から説明し直すことになった。
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