春樹

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「あたしは小学校の先生」と夏帆が、「あたしは美容師」と千秋が。 それぞれの夢を言いあって、“ねーーっっ”と笑った。 理由を聞くと、夏帆は「渡辺先生(俺たちの小学校の先生だった人だ)みたいになりたいから」で、千秋は「髪をアレンジしたりするのが好きだし、もっと勉強したいから」だそうだ。俺が聞いたことも、話したことすらない話を、この3人はとっくにしていたのだ。そして、それぞれの目標をちゃんと持っていたのだ。 「春樹は?」 興味津津の顔で、千秋が俺に言う。 …俺?  おれは…………………… 考えてみても、分からなかった。 「なにも。」 結局言えたのはそれだけだった。 この年じゃ決めてないやつの方が多いからなあ、と冬真が言った。しょうがないよね、と女子2人もうなずく。 今まで、何もかも一緒だと思っていた。一緒に考えることも、笑うことも。 そんなはずはない、と心のどこかでは分かっていたはずなのに。 それぞれに考えていることもあるし、俺が知らないみんなもいるのだと。 何だか自分よりも大人になったような親友3人、それにくらべてまだまだ子供の自分。 露骨に線が引かれた気がして、胸の中がざわつく。 ふと見れば、冬真のタマゴサンドイッチは全部食べ終ったあとで、たたまれたラップが弁当箱の中に転がっていた。 今思えば、これが俺たちの最初の変化だったんじゃないのか。
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