春樹

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5月。今日は特に、木漏れ日がまぶしい。 気付けば、『受験生』というたいそう迷惑な称号をもらってから、すでに1ヶ月以上も経過していた。4月にはまだ地面に落ちていた桜の花びらも、どこにいったのか消えてしまっていた。 戸惑いを抱えつつも、時は待ってはくれないのだ。 ホームルームが済んだ後、窓の外の緑に目を向けていると、ちょうどいい日差しのせいか、少しずつ眠くなってきた。 いいや。まだセンセー来ないし、寝よ。 と思ったら、後ろから勢いよく肩を叩かれた。 「よっ!ハル!!」 みると、(本人いわく「生まれた時から」という)茶色の巻き毛、薄い色素の瞳が俺を覗き込んでいた。 「あぁ、日向…」 彼の名は遠藤日向(エンドウヒナタ)。最近俺たちと仲良くなったやつで、たまに一緒に弁当を広げたりしている。(俺は「ハル」と呼ばれている。)純日本人のくせに、二重のくりっとした瞳と、バランスのとれた顔、ついでにいつもにこにこしている王子様キャラだから、冬真と並んで、女子に人気が高い。 ・・・別に悔しくないけどね。   別に悔しくないけどね! でも、こいつと冬真の2ショットを見ると、無性に、みんなちがってみんないい、という、あの詞を思い出す。
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