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いつも起きて来る時間に姉がやって来ない。
就活に向けて徹底的な自己管理を行ってきた姉にしては珍しい。
なにかあったのかな? 寝坊もたまには良い休養になるだろう。と、安心する反面で、やっぱりちょっとだけ心配になる。
俺は姉の部屋まで行ってドアをノックした。
「姉貴、朝だぞ。……朝食作っておいたからな」
ーー返事がない。寝ているのなら、それはそれで別にいいんだけど。
中からベッドの軋む音がして、「ふぁあ~、今起きるー」と欠伸を混(ま)じらせた呑気な姉の気配が、ノシノシと近づいて来た。
ドアが開かれる。
重力に逆らえ切れず垂れた右肩に、シャツの襟が片寄って、鎖骨のあたりがセクシーなことになっている。
「起こしてくれてありがと。はあ……寝過ぎた」
「怠そうだな。風邪でも引いたのか?」
「体がやたらと熱いのは、風邪の兆候か……。なら、引いたのかも」
「今日は学校休んどけよ」
「ん~~~っ!?」
「いや、俺に向かって露骨に嫌そうな顔されてもな」
「……学校には行く」
俺が「今日休まないと更に悪化して、結局休む日数が増えることになるぞ」と諫言したら、姉貴は「一日でも休むと内心に響く。明日から土日で休みだし、なんとでもなる」と忠告を撥ね退けて登校してしまった。
そこまで言うなら好きにしろ。後で高熱出して学校行けなくなっても、俺は知らねぇからな!
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