夜と雪

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今日は暖かいな・・・・・・ スマホのアラームを止め、眠い目を擦りつつそう思う。 だが、窓の外に目を向ければ、庭にはまだ1m近く積もっている雪。 思わず苦笑する。 俺もすっかり青森の人だ。 もう、1m程度の積雪じゃ驚かなくなっていた。 「っと、今日は休講だったな・・・・・・」 着替えのために起きようとしたところで思い出した。 確かバイトのシフトも入ってない。 じゃあ二度寝するしかないだろ。 もう一度、モソモソと布団に潜り込む。 あー布団あったけぇ・・・・・・。 幾ら気温を暖かく感じても、やっぱ布団の暖かさは格別だな。 すっぽりと頭から布団を被り、またウトウトと微睡みへと戻ろうとしていた。 「っ痛!?」 ゴリッ、と固い物が肩甲骨に食い込み、眠気が消し飛んだ。 布団を跳ね退け、ベッドから飛び降りる。 ベッドの上に、石が転がっていた。 二年前のバレンタインに、短い文とともに月に贈った、あの『幸せになれる石』、ネックレスと一緒に贈った指輪だ。 「なんでこんなとこに・・・・・・」 俺が贈ったから間違いない。 月の手元にあるはずの物。 月のことを思い出すのには十分なきっかけ。 手のひらで転がし、思い出に浸る。 「会いたいな・・・・・・」 なぜか、無性に会いたいという気持ちに駆られていた。 そして、俺の耳に家のチャイムが聞こえた。
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