夜と雪

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今日ずっとポケットに入れていた物を取り出す。 それは幸せになる石。 一ヶ月前、突如俺のベッドに現れた石。 月の来訪を告げるかのように俺を眠気から引き剥がした石。 車をチューニングするつもりでバイトして、貯めていたお金で加工して貰った石。 加工され、小さな箱に収まった石。 俺たちを繋ぎ止めてくれた石。 この石を買ったとき、付いていた説明は 【 ~永遠の愛~  この宝石を身につけると  貴女に幸福がもたらされ  永遠に消える事のない  愛を手にするでしょう 】 月はきっと、この石のついたネックレスを肌身離さず身につけていたんだろう。 だから俺は、月に『永遠に消える事のない愛』をあげよう。 月の前に跪き、箱を開く。 収まっているのは、神秘的に光輝く石が付いた指輪。 二年前に送った指輪を加工し直してもらった物。 「俺が君を一生守る。 月が寂しい時も、辛い時も、俺が傍にいる」 そして、一番重要な言葉を続ける。 「月、愛してる。 俺と結婚してください」 あんなに嫌っていた『夜』と『雪』が、今日好きになった。
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