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「あいつらを参考にしようと思ったのがそもそもの間違いだな」
マット運動というか前後運動のジェスチャーをするマルミラに、僕はお断りの一報を伝える。
ごめんよマルミラ、その優しさは優しいという仮面をつけたハードなんだ。
僕にはとても参考にできそうにない。
マルミラは「なんだよ、まだ朝起きてから二時間と経ってないぞ」といって、もっと喋る気満々だったようだが、今度こそは放送禁止になるワードが漏れ出てしまわないとも限らない。残念だけどそこまでだ。この話はチャンタクさんがいないところでまた後日。
「優しくする話だけどよ」
私のことは気にすんな。
ただ、とマルミラは言う。
「もうちっとイムの話をしっかり聞いて、イムのやろうとしてることをもうちっと肯定してやってくれな。昨日みたいなことでもない限り、あいつは我儘を言うタイプじゃねえからよ」
「だね」
一生懸命で、忍耐強い。いつも朗らかでいて何事にも熱心だ。だけど一歩身を引いていて、結婚したら夫の後ろからついてくる妻になりそうな。自己主張という意味ならきっと不得手な作業で、引っ込み思案というわけではないけれどでも、言いたいことには口を噤んでしまう。器用だから進んで不器用を選んでいる。あまり誉められた生き方じゃない。
「なんて、それこそ僕が言えた義理じゃねえか」
苦い笑顔。
今日は苦笑いの多い日だな。
そして、また僕は苦い顔で笑ってしまうのだった。
「もう一回くらいなら、好きにされてあげようかな」
「ああ、それがいいな」
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