死番虫バルカロール

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「そーだねえ……、彼の好きな言葉は『ちら見せ』だそうだよ」  マニアックだなおい。  たしかにチラリズムは大事だけれども。 「いやいやそーではなく」  僕だって冗談だと思いたいが、厳然と事実はそこに、確たる証拠を明示している。  眼鏡をクルウさんに見せる。 「あー……、ああ、そう言えば君たちが来る前の日に、放り込んどいたんだった」  ぽん。  手を叩く。 「眼鏡を貸し与えて、先遣隊として地下に放っていたのだ。すっかり忘れてたよ、あっはっは」  感情のない笑い。  忘れていたことに毛ほどの罪悪感はなく、思い出したことにもまったく興味はないらしい。
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