死番虫コラール

4/27
前へ
/739ページ
次へ
 鬼気迫る。  しかしながら鬼の形相とは呼べない。ベクトルは真逆だ。愉悦と恍惚とが渾然一体となり、その表情や気迫はまさに──変態の権化。だというのに戦慄する、恐怖する。見よ、あそこに佇むは、情念の鬼。 「てっきり臆するかとも思ったが、まあいいだろう。そのつもりならば容赦はしない。先に言っておくが、私は紳士だが、フェミニストではない」  女性陣にのみ向けられた気迫。  なんという圧迫感だ。男の僕にでもわかる。おそらくあの男の頭の中では、彼女たちはもうとんでもないことになっているに違いない。心なしか、イカも、いつもよりも、余計に触手の動きが機敏だ。
/739ページ

最初のコメントを投稿しよう!

872人が本棚に入れています
本棚に追加