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「ひゅーるるるる」
クルウさんは視線を遠くに、吹けない口笛を吹いて誤魔化す。
「んんー? んー……、うーん、まさかね……」
そう言うと、何か思うところがあったらしいテテさんは壁をすり抜け部屋から出ていってしまった。
気づかれた、かな。
「ヨーイチと言ったな、見事なり」
バドは賛辞を送る。
「いやいや運が良かっただけだよ」
僕は謙遜する。
まあほんとに運が良かっただけだし。正直なところ──彼女たちがイカに捕まってくれさえすれば仮定なんてどうでもよかったんだけど。
「私を狙ったと見せかけてレイカちゃんを狙ったと見せかけてやはり私を狙っていた。予々(カネガネ)噂に聞いていたが、いやはや君の辣腕ぶりは、聞きしに勝るな。目論見も素晴らしい。ただわからぬことが一つあってな。レイカちゃんを引き付けるにしても、私を包囲するにしてもだ──何故魔法を使わない?」
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