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「急にどうしたんだい。別に勝ちにこだわりがあったわけじゃないんだろう? ただの巻き込まれ少年感ばりばりだったじゃないか。どうしてそんなに勝ちたくなったんだい?」
半笑いはそのままに、不思議がるクルウさん。
そう、巻き込まれ少年だ。だから僕は勝たなくていい。勝ちたいのは、勝たなきゃいけないのは僕じゃないんだ。
「猫耳ですよ」
「……はい?」
クルウさんは本気でわからないという顔をした。まったく、みんな何もわかってない。
僕は真摯に、とても大事なことをクルウさんに伝える。
「あいつが……、あの猫耳幽霊がですよ、一時とはいえ、猫耳を自己の個性のひとつに加えておきながら……、その猫耳を……『くだらないもの』だと言ったんです。わかりますか? そんなやつに猫耳を語らせたら──世界の終わりに等しい」
どこかバドを見るような眼差しを感じた気がしたが、クルウさんは包帯を巻いているので、さすがに気のせいだろう。
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