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聞くところによると、この本もどうやらレプリカであって、本物はまた別にあるらしい。どうりで雑に扱われてるわけだ。
クルウさんは、計画をまとめるとかで、うろうろしながら考えを精査する。じっとしているより、動いていた方が考えがまとまるらしい。
僕はソファーに座り、本を読む。けれど本を読もうとページを捲るたび、そわそわしながら、クルウさんはこちらの様子をちらっと窺う。恥ずかしいのはわかったけど、見知らぬ他人の過去なんだから、そんなに気にしなくても大丈夫なのに。意外と繊細なんだなあ。
確かに序盤こそ恥ずかしいが、どうやらこれは日記らしい。
『〇月×日
世界はいくつかに分かれてしまった。戦争がなくなった。あの子も帰ってこなかった』
大陸分断以前からの記録。アンネの日記と同じようなものか。それで、数少ない、歴史的に価値があるものと判断されたみたいだ。
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