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バドは、落下した。
軟体動物は下で誰かが落ちてきたら助けようと身構えていたらしいのだが、あいつがしようとしていたのは補助であって、ただただ純粋に自由落下してくる物体など、掴めるはずもない。
バドが落下し、軟体動物が手を差し出すのもむなしく、瓦礫と一緒に底に沈んだ事実を、僕は軟体動物から直接聞いた。だからバドがどうなったか知っている。
知っていて僕たちはそれを、利用しようとしている。
「そんな、決めつけるにはまだ早──」
「動かないんだよ!」
あらんかぎりの想いの丈。
今にも壊れてしまいそうで、痛々しく、響いた。
ボードを指差し、テテさんは、確認なんてしたくない事実を、受け入れることもできず、否定することもできず、目を伏せ続ける。
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