死番虫トロイメライ

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「ほら、ずっと……。おかしいよね。馬鹿な冗談やめて、さっさと起き上がれって言ってきてよ……ねえ、お願いだから……」  チャンタクさんやラナ姉妹の表示は少しずつ移動しているが、バドの表示に変化はない。もうどれほど表示を見たのだろう。目を伏せていても、差された指先はちゃんとバドを指差している。  しかしそこには──もう一人表示されている。  クルウさんが、バドのいる場所に、表示されている。  しばらく項垂れていたテテさんだったが、僕の視線を追って、ボードに目をやる。 「なに……やって……」  と、クルウさんは移動を開始する──バドの表示を引き連れて。  テテさんが訝(イブカ)しむのも無理はない。表示上でもよくわかる。バドは移動しているのではなく──クルウさんに運ばれている。
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