死番虫トロイメライ

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「やめさせたいですか」  足場に再びバドを引き上げる。 「そんな、ことで私は……」  言葉を詰まらせる。が、まだテテさんは負けるつもりはないらしい。 「なるほどわかりました」  強情であればあるほどに、辛くなるというのに。  そしてバドが──落とされる。 「あぅ……っん」  噎(ム)せかえす気持ちの悪さに苛(サイナ)まれる。テテさんは心を疲弊する。 「はいこれでとりあえず僕らがリードしましたね。でもまだまだです」  まだまだ終わらない。  これは負けを宣言させるまで続けられる終わりのない地獄。 「だったら……」  テテさんは飛び上がろうとする。 「別に行くのは構いませんが、この部屋の道具は調べさせてもらいますよ」  僕の言葉を聞いて、テテさんはためらう。やはりこの部屋にあの戦いを優位にした装置か何かがあるらしい。  正直僕もここまでして、と思わなくもない。心証もよくない。けれど──本当でないのなら話は別だ。ここまで真実味を帯びた嘘、よくもまあ考えたものだ。
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