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歩みを進めた先に、見るからに年代物の本。開いてみるが、ところどころ虫に食われ、ちゃんと読むことはできない。
本を戻す。
これだけ待ってみても動きなしということは、やはり効果は確実ではなかったのだ。
「クルウさんには、もう待ってもらう必要はなさそうですね。とりあえず、ポイントだけでも稼ぎましょうか」
「待って」
再開の合図、左方向に歩みを進めようとした。が、テテさんは遮り、僕の歩みを止めた。
見ると、テテさんは立ち上がって、僕を見据えていた。拳を握りしめている。
ぽつり、ぽつりと、涙の代わりに、言葉が落ちていく。
「私は……、私は」
この勝ちはバドの犠牲によるものだ。だから本当なら勝って終わらせてあげたい。けれど、それでバドを傷つけるならば。葛藤が、目に見えてわかった。
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