死番虫トロイメライ

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「そんな、だって君は……」 「幽霊になって迎えに来たんだ。これで本当に、いつまでも一緒にいられる」 「ばか……、冗談でも、もう死んだなんて言わないでよ……。ひぐ……、うわあああああああ!」  テテさんは泣きながら、バドに抱きつく。鼻水やらなにやらで、げじょげじょになっている。  今度こそ、僕らの負けか。  そりゃないだろ。 「ヨーイチ、仲間を危険にさらして悪かったな」  バドは詫びた。おそらくは天井崩落のことを言ったのだろう。  僕は溜め息まじりに言葉を返す。 「気にすんなよ。どっちかって言うと、お前を死んだことにしてまで勝とうとした不謹慎野郎に、天罰ってのが当たっちまったのかもしれねえからな。悪いのはむしろこっちだ」  泣きじゃくるテテさんを見て思った、人を騙してまで勝つのはやっぱりよくないな。あれは正々堂々戦った結果じゃないか。作為こそあれ、それが実力だったのだ。誰かを貶(オトシ)めて、誇張して勝利を得たとしても、素直に喜べたのかな。なんて、今更ながらに思うところだ。
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