死番虫トロイメライ

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「この戦い、我等の負けだ」  バドは言った。  息も絶え絶え、死力を尽くして走ってきたのだろう。よろけ、その場に座り込む。 「え?」  僕は聞き間違いではないかと聞き返した。  聞き間違いではないと、バドは言い返す。 「私は逃げた。信じられなかったのだ、テテがまだ私を信じてくれていることを。だからもう会うまいと、今生の別れを覚悟した。そしてテテもまた、私を信じられなかった。私が死してなどいないと、口にはしていたが、心のどこかで諦め、それが涙となって溢れたのだ」  バドは腰に手をあてる。  血が滲み出ていた。  出血量から見て、軽傷ではなかった。 「だがお前は勝利を信じて諦めなかった。それが決定的だ。あのままであれば、テテは敗北を口にしていただろう。もし立場が逆なら私もきっと同じことをした。敗因と言えばそんなところだ」
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