死番虫トロイメライ

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「だが清々しい。負けはしたが、大事なものを再び手に入れることができた」  そう言ってバドは、テテさんを抱き寄せる。 「え、あっ、そんな」  恥ずかしがっていたが、テテさんは嬉しそうだった。 「にゃはは、私もだよ。私も、すごく大切なものを、やっと手に入れられた気がするよ」  なんだろうな。  僕だけ蚊帳の外だな。  なんかもう好きにやってくれって感じだ。  こういう時こそあれだな。 「ギップリャ」  誰に言うでもなく、世界とかなんかそんな誰かに向けて、僕は苦しみの表情を添えて、言ってみた。爆発、しないかなあ。  と。    突然。  テテさんの身体が光だした。 「なんか、嬉しいことも楽しいこともいっぱいあったしね。もうお疲れって感じですよ。テテさんこれにて今日のお勤め終了、なんちて」  嬉しいんだか悲しいんだが、色々入り交じったぐちゃぐちゃの顔で、テテさんは言った。
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