死番虫トロイメライ

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 次第に色素をより薄くしていき、テテさんの身体はより透けていく。  もしかして成仏しようとしてる? 「テテさん……」 「そんな顔しないでよ。負けちゃったけど、私すっごく今嬉しいんだ」  にかっと笑った。  今までで一番綺麗な笑顔だと、僕は思った。 「ずっと一緒にいてくれる?」  テテさんは尋ねる。 「答えるまでもないな」  バドは強くテテさんを抱き締めた。  そして光は粒子になり、消えていく。消え行く光の中から、小さく、ありがとうと、聞こえた気がした。  それに合わせて、床が揺れ始める。床だけじゃない。壁も、天井も、なにもかもが揺れを強くしていく。  イメージで構成されていた空間だから、イメージの主がいなくなって、存在が保てなくなったのか。  走音。 「急げ! 崩れるぞ!」  現れたクルウさんは、切迫した声色で告げた。
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