怪人と僕

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 そして何故にそんなことを思ったのかと言うと──時刻にしてほぼ丑三つ時、草木も、そして学園も眠りにつき、人の気配を完全に失い、あるのは非常灯の薄赤く灯った光のみ。  僕たちは今、夜の学園にいた。  僕たち、というのが誰かと言えば。 「怖いですねシガラキさん」 「そうだね、でもできればもう少し離れてくれないかな。歩きにくいんだけど……」 「だめです! こんなか弱い女の子が怪人の餌食になったらどうしてくれるんですか!」 「いやどうしてくれるって言われても……」 「責任とってくれるんですか!」 「そりゃ僕のせいなら、とらないこともないけどさ」 「なるほど……そのパターンもありですね……」  そう言ってチャンタクさんはひとりごちた。  結局なにが言いたかったんだろう。  チャンタクさんは、僕の腕にがっちりとしがみついている。怖いと言うわりには、なんだか嬉しげで、心なしか表情も緩みきっている。
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