怪人と僕

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 そのことを、マルミラは「人生最大の汚点」だと言う。未だかつてそのようなことは、ただの一度たりとも起こしたことはなかったのだそうだ。  彼女は、親衛隊を、仲間を、身内を、とても大事にする。だから彼女は、親衛隊隊員すべての氏名、顔、性別年齢、好き嫌いや趣味嗜好まで、あらゆることを網羅していて、必ず毎日彼らに話しかけ、些細な相談事から日常の愚痴までどんなことでも話をして、みんなの心を知り、夢を知り、何をしてほしいのか、何が足りないのか、自分にできることは何で、そのためにはどうすればいいのか、それをずっと考えている。  部分最適の総和は全体最適ではない、というのを聞いたことがあるが、彼女は部分最適の総和を全体最適にしようとしているのかもしれない。  だから誰一人として、彼女の意に反することはしなかった。彼らはマルミラを慕い、マルミラは彼らを愛している。そのサイクルこそが、マルミラの求心力の表れだった。
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