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ならば僕を襲いかけた人物は、どうしてそのサイクルより逸脱したのか。
そいつはどうやら、親衛隊の名を騙っただけの、ただの愉快犯だったらしい。別に狙うのは僕じゃなくてもよかったし、名乗るのは親衛隊じゃなくてもよかった。ただ名乗りやすい名前がそこにあって、それらしい理由が転がっていたから。そいつはただ自分の力を試してみたいだけだった。
だというのに──マルミラはそれすらも後悔する。親衛隊の名を騙られたのは、自分の力のなさ。どんな理由であれ、親衛隊に籍を置いた時点でそいつは家族も同じ。家族との対話を蔑(ナイガシ)ろにするのは、いつだって親の責任だ。だから犯行をもっと早くに防げなかったのは──犯行を思い立たせてしまったのは、すべて自分の責任だと、マルミラは嘆く。
そんな見知らぬ他人にまで、気を回す必要ないのにと僕なんかは思ってしまう。
そしたらマルミラは。
「家族ってのはよ、家族でいるだけで幸せになるんだぜ? だからよ、私は──世界中のみんなと家族になりてえんだよ」
なんてことを、恥ずかしげもなく言うのだ。
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