怪人と僕

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「とことんに、真っ直ぐな奴なんだよな」  正義感などではない。  そんなものがあったら、犯人たるそいつを、奪い取ることなどしなかった。  真っ直ぐなのだ。  一途で単純。  単純馬鹿だと、自分はただ、守りたいものを守るだけの、とんでもないエゴイストなのだと、マルミラはいつも笑う。  けれど素敵なことだ。  馬鹿は馬鹿でも単純馬鹿、同じ馬鹿なら、貫かなきゃ損ってものだろう。  そういうマルミラを、僕は格好いいと思う。マルミラだけじゃない、信念を持って生きている人を、僕は心から尊敬する。 「あーあ、僕ってなにがやりたいんだろうなあ」  僕は、天才たる幼馴染みが見つけてくれるのを、ただ待っている。ただただ世界が変わるのを待ち望んでいる。  世界は変わるものではなく変えるものだなんてことは、生きてりゃ誰だって気がつくことだ。だけどきっと、それを最初に口にした奴はわかってない。それに気がつくような歳になってからじゃ、いろいろともう遅えんだよ。
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