怪人と僕

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 くそう、ビビってどうする。こんなときのための僕でもあるだろ。  パシン! という乾いた一音。勢いをつけて、僕は両頬に張り手をかます。 「……よしっ!」  気合いだ。  元気があれば、何でもできる。  チャンタクさんが、さっきまでのものとはまた別の、奇異なものを見る目で僕を見、そして小さく「大丈夫ですか?」と呟いた。心配されたのは頬っぺたか、それとも頭か。  良好だ。  脳細胞の末端まで電気が走り、冴え渡る。固まっていた思考と肉体が、一瞬にして解きほぐされる。ただそれと引き換えにして、両頬が死ぬほどジンジンしますよ。  もう二度とやるもんか。  素人判断でのショック療法は危険ですのでお止めください、って注釈でてるなこれ。よい子は真似しないでね。 「ちょっとダイジョばないけど……、大丈夫」  こうかはばつぐんだ、色んな意味で。
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