怪人と僕

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「昔先生のことをお母さんと呼んだことがある」 「いやああ!」 「パジャマを着ようとして、下だと思って履いたら上だった」 「やめてええ!」 「ガラスに気がつかずに、おもくそ顔面からぶつかる」 「にゃふぁあああ!」 「厳かな場面だからと控えめに嚔(クシャミ)をしようとした結果、えもいわれぬ音が響き渡る」 「いやっひぁあああ!」  恥ずかしさのあまり両手を振り回して、チャンタクさんは、わたわたと慌てている。  やべえな、なんて殺傷力だ《絶命言(スペルタブー)》。こいつはやっぱりすげえ力だぜ。  さてと、チャンタクさんも気分が少しは紛れてくれたかな。僕は改めて気合いを入れる。 「すぐ帰ってくるから、だから心安く待ってて、ね」  それでもやはり心配そうにするチャンタクさんだったが、僕の気持ちを酌んだのだろう、「いってらっしゃい」と小さく手を降る。  僕は「いってきます」と言って、歩き出した。
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