怪人と僕

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 テテ。  地下での一件以来、猫耳幽霊の称号を大衆的に知られた、一応『精霊』。通常時は半透明で、壁抜けや変身もでき、本気を出せば物体に触ることもできる。って、精霊っていうか幽霊だろやっぱり。 「な、なにさ、押し黙っちゃって」  幽霊もどきは、フラフープで遊ぶのをやめて尋ねる。  きっと怒られるのじゃないかとか思ったのかもしれない。けれど僕は、こっちにもフラフープがあるんだなあ、などと状況に整合しないことを考えていて、思考がまったく追い付いていなかった。おそらくその瞬間の僕の顔は、とてつもなく間が抜けていて、ぼけーっとした表情だったに違いない。  さあさあみなさん。  お手を拝借。  この浮わついた空気に向かって、軽快な右を、逆水平に綺麗な半円を描いて。 「なんでやねん」  毒気を抜かれたというのか、あるいは肩透かしをくらったというのか、妙な脱力感に苛まれながら、ただただ僕は、今までの件(クダリ)すべてに、突っ込みを入れた。
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