怪人と僕

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 え? なに? もしかしてあの八不思議とかいう、なんだかハラハラで微妙にワクワクなイベントは──全部この幽霊もどきが元凶なのか。 「あのー……、テテさん」 「はいはい」 「テテさんは夜な夜なこんなところでこんなことをしてるんですか?」 「こんなこと?」 「不法進入して勝手に遊んだり、罪もない一般学生にちょっかいを出したりしているのかと聞いているんです」  あとトイレットペーパーを投げ込んだりな。  悪びれる様子もなく。 「そうだけど」  とテテさんは言った。  『けど』を最後につけるな若者め。いや僕のほうが数十年単位で若者か。  なんだろうこの締まらない感じ。  どうせなら、鎧袖一触の恐るべき怪人と一進一退の攻防を繰り広げる、突然の大アクション活劇になってしまったほうがまだよかった。謎が謎を呼ぶ八不思議に隠された陰惨な連続殺人事件、愛と悲しみが織り成すサスペンスミステリーにでも発展したほうが、まだ僕らの気力が湧くというものだ。
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