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「でも……」
間を置いて、テテさんは言う。
「君にならいいよ」
きゃー言っちゃった、なんて言いながら、顔を押さえて後ろを向く。
はあ。なんで僕の回りには、こうも冗談ばっかり言うやつらが集まるんだろう。ほんとに対応が面倒で困る。
「いいんですか、バドが泣いてますよ」
「私は恋多き女だからね。恋する心を忘れたらね、自分磨きを忘れちゃうんだよ。だからこれは潤滑油。自分を綺麗に磨くための、ちょっとしたトレーニング、なんちて」
「何言って……」
「あ、もしかして嘘だと思ってる? 勿体ないよ、テテちゃんどんな過激なご要望だって答えられるのになあ」
テテさんの声色が妙に艶っぽい。
あれ?
冗談なのかこれ?
もしかして僕は今、期せずして人生初の一大イベントを軽やかに迎えているのじゃないだろうか。
なし崩し的とはいえ、女性の服を脱がしている。
相手は虫だが。
本来ならばもっと抵抗するところなのに、それほど嫌な様子を見せない。
相手は虫だが。
しかもそれを示すような言動で、誘惑するような挑発をちらつかせてくる。
相手は虫だが。
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