怪人と僕

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 手を開く。  満身創痍といった感じで蛇行しながら、テテさんは──僕の手をするりと、突き抜けて出ていった。  いきなりの挟み込みに肝を冷やしたのだろう、半ば泣き声でテテさんは言う。 「体感的には、私二回死んでるんだからね! 君は私の中の血も涙もないランキング堂々の二位だよ!」  ちなみに一位はクルウさんらしい。形状がアレなだけにはっきりとはわからないのだが、血色のよろしくない面持ちだった。クルウさんも頼りになるランキングがどうとか言ってたけど、ランキング形式にするのがブームなのかな。  透化。  さっきのも今のも、どちらも身体を透化させることによって、すり抜けて危機を回避していた。  飛び回りながら文句を言うテテさんを、ためしに捕まえようと、手のひらをすっと薙いでみた。手のひらに収まったはずの虫は、掌中から難なく抜け出ることを成功させ、得意気に僕の周りを飛び回ってみせた。
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