怪人と僕

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 僕が触れないとわかり強気になったのか、テテさんは態度を豹変させ、僕の周りを、本物よろしく不規則な軌道で周回する。 「ばーかばーか。やーい、おたんこなす、唐変木、あんぽんたん。お前の母ちゃんでーべーそ。百貫デブ。あほ、とんちき、表六玉、与太郎、粗忽者のお調子者の格好つけ、いーっだ」  仕返しとばかりに羽音を。  そして罵声。まあ罵声というか、思い付いた悪口を並べているだけのような気もするが。  振り払おうとしてみるも、やはり意味がない。それが彼女の行為に拍車をかけた。かつての血が騒いだのか、時間が経つにつれて段々と動きに無駄がなくなっていく。何度か謝罪も試みてみたものの、どれも反応はいまいち、納得させるには至らなかった。 「仕方ない」  別に付き合ってやる必要もないのだが、こいつが人間の心を忘れて、虫として覚醒してしまわないとも限らない。まあそれはそれで面白くもあるが、クルウさんもバドも、それでは困るだろう。
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