怪人と僕

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 一度、彼女の中の虫の部分を完全に消してしまった方が、今後のためにもいいのかもしれない。  まず火を出す。  それを、引火しないように、空中で消えるよう気を付けながら放る。本能に引っ張られて、テテさんはその火についていく。 「わー」  その隙に、僕はリュックに手を突っ込む。  取り出したるは赤色の缶。 「後でちゃんと回収にこないとな」  蓋を外し、天面のシールを剥がす。中の金属缶の入ったアルミ袋、添付文書、警報器カバーを取り出し、魔法で水を線のところまで入れる。そして容器を床に置く。アルミ袋を開け、金属缶を取り出し、矢印が上になるように気を付けながら素早く水に浸し、蓋をはめ──僕は全力で、入り口へとダッシュした。  もくもくと勢いよく煙が充満していく音がする。しばらくして中からは、断末魔とおぼしき悲鳴が、聞こえたとか聞こえないとか。
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