怪人と僕

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「違うんだよー」  テテさんは弁明する。 「私はただ、通りかかったときに、中から『紙がないから取ってくれませんか』って言われて、それで投げてあげたんだけど、でも無闇に人に会っちゃいけないって司書様に言われてたから、だから隠れてやり過ごそうとしたんだけど、出てきたら誰もいなくてびっくりしちゃったみたいで、そこにたぶん尾鰭(オヒレ)が付いちゃったんだよ」  なるほどね。  噂が一人歩きしたってやつか。  まあ喜び勇んで噂を作っていたなら、もっと妙ちきりんな内容になっていたに違いないのだ。嘘をつくような理由もないか。  質問ついでにもうひとつ。 「テテさんは屋上でなんて何をしてたんですか? あんなところに何か面白いものありましたっけ」  『屋上の怪人』様が、どうして『屋上の怪人』になってしまったのか。どうせトイレットペーパーの件と同じように、ちょっとした物事に、尾鰭が付いてしまっただけのような気もするが。 「屋上? 私そんなとこ行ってないよ」
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