怪人と僕

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 そういえば、と言って、テテさんは数年か前に、最近のような七不思議の噂を聞いたことがあると言い出した。そしてその時の噂にも『屋上の怪人』なんていなかったと。  まだ本来の七不思議の色が強かったが、その頃の噂にも、そこはかとなくテテさんの影響が出ていたのを覚えていると、テテさんは言う。 「『屋上の怪人』の噂ならちょっとだけ聞いたことあるけど、ほんとここ最近の話じゃなかったかな」  ……じゃあ、もし。  ここ数年のうちに、テテさんの遊興で本来の七不思議が改編されてしまったように。新たな七不思議もまた──『屋上の怪人』によって改編されていたのだとしたら。 「っ!」 「あ、ちょっと! まだ私そんなに速くは走れな──」  テテさんの制止を振り切って、僕は走り出した。  てっきり、あの八不思議はすべてテテさんによるものだとばかり思っていたが、そうではなかった。八不思議のうちの七つまでは確かにテテさんによるものだったのかもしれない。でもそこまで。  ──『屋上の怪人』は別にいる。  だとしたら、チャンタクが危ない。
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