怪人と僕

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 先程までチャンタクさんと談笑していた場所、飲み込まれそうなほどの暗闇を従える廊下の途中。間違っていないはずだ。確かにここで話をして、ここで待っていてほしいと約束をした。 「チャンタクさんが……いない」  テテさんなんかどうでもいい、とにかくチャンタクさんのところまで一直線に走ってきたはずだった。  何度も辺りを見回す。来た道、暗闇の先、部屋の中や窓の外も見てみたが──チャンタクさんがどこにもいない。  まさかあの鬱々たる黒に──生徒を拐うという怪人の悪意に、飲まれてしまったとでもいうのか。 「チャンタクさん! どこですか! いるなら返事を──」  階段。  歩いていると、上階へと続く道が、まるで僕に手招きするように、現れた。 「もしかして……屋上」  『屋上の怪人』と言うぐらいだ、チャンタクさんは屋上に、怪人の招待を確かめに行ったのかもしれない。
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