872人が本棚に入れています
本棚に追加
一方的に進められる冗長めいた文言。楽しげである。
視界もないままに、僕は立ち尽くしていた。なんとか前に進もうと足を一歩踏み出したら、その一歩目で脛をぶつけた。真ん中縦一列に花壇があったことを、僕はそこでやっと思い出した。僕の記憶力と判断力のなんと鈍いことか。なんとか少しずつ足場を確かめながら迂回しつつ、僕は声の主に接近する。
「そんな世界が私は大好きでね」
声の主は言った。
そして。
ああ、ただひとつ言っておかなければならんな。
と続けた。
「『夜』とはあくまで装飾に、脚色にすぎない。すべてはまやかしで、本来あるべき姿とはかけはなれている。欺瞞と偽証の上にのみ成り立っている虚構の賜物だ」
そして。
「それにも程度がある。ベクトルがある。前向きにのみ進むこともあれば後ろ向きにも進み、肥大だけでなく萎縮もする。夜とはある種の増長作用のようだ」
ゆえに。
「感状の傑出に伴って──ヒーローやヒールといったものが際立つ」
最初のコメントを投稿しよう!