怪人と僕

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 その影は、臆面なく言った。  よく見えないので本当に臆面がなかったのかはわからないけれど。 「いや…、そういうのではなく、ちゃんとした名前をですね」  チャンタクさんのこともあり、実のところ、僕はかなり気が急いていた。もしこの人物が本当に屋上の怪人と呼ばれる存在であって、チャンタクさんがいなくなったこととに何かしら関係があるなだとしたら、遠慮ができないだろうくらいにはかなり。  さらに一歩、近づく。  影は、うーん、と唸る。 「色々呼ばれたので何とも。お気に入りでいいのならそうさな、《闇衣(ヤミゴロモ)》なんて割と的を射ていて中々。《ビックリ箱》というのもまた珍奇でいいが、それとも《真実に最も近い贋作》か、あれは一番内情を知っているのかと思わん勢いだな。いやいや端的に《野放図》。はたまた華麗に《夜光蝶》。格好よさに重点を置くならば《グリッタースミス》も好きなところだな」
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