怪人と僕

56/58
前へ
/739ページ
次へ
「じゃあ僕帰りますんで」  チャンタクさんがここにいないとすると、他にどこか行きそうなところがあっただろうか。テテさんもそろそろ追い付く頃だろうし、そしたら手分けして探してみようか。  階段入り口の方へ進もうと、足元を確認しようとしたところ。 「あ、ちょっと待ってくれるかな」  呼び止められる。  もう用事がないのでさっさと帰りたいんだけどな。少し面倒とは思ったが、ここで会ったも何かの縁だ、むげにするわけにもいかない。  僕は振り返った。 「何でいきなりこんな、正体を話すようなことしたのか疑問に思わないんだ」  暗闇でもよくわかる。  暗闇だからこそよくわかる。  突き出された右手に──光球。  その光は、黒い。  黒い光を放つ球。  口元が、三日月のように微笑んでいるのがわかった。
/739ページ

最初のコメントを投稿しよう!

872人が本棚に入れています
本棚に追加